発声可能上映という映画の新しい視聴スタイルと諸々

発声可能上映「シン・ゴジラ」の例
映画の新しい楽しみ方である発声可能上映。最大の懸念材料とその対策について考えてみた次第です。

映画も以前は集客に苦慮しているという話でしたが、ここ数年は良質な映画に恵まれ、映画館側もいろいろな上映のありかたを模索しているおかげでジワジワと盛り返している感がありますね。その上映方法における多様性の一つとして、発声可能上映というものがあるわけですよ。

発声可能上映って何よっていう意見もあろうかと思うのですが、ざっくり書くとライブのように応援しながら映画を見ましょうというやつです。知っている限りでは「KING OF PRISM by PrettyRhythm」(キンプリ)という男性アイドルものの映画が最初だった気がします。話には聞いていましたが、とても中毒性が高い危険なアニメだそうで。

レポートを読んでるだけでヤバい感じがビンビンに伝わってきますね。最高。サイリウム振り振り、絶叫しまくりな応援上映が、今度は「シン・ゴジラ」に飛び火したわけですよ。

『シン・ゴジラ』、発声可能上映の衝撃 – 日経トレンディネット

「シン・ゴジラ」の発声可能上映は複数回行われまして、続々とアップされるレポートを見ているうちに辛抱たまらなくなりオレも下記のやつに行ってきたんです。

9月15日(木)「全国一斉!発生可能上映」実施決定!|NEWS|映画『シン・ゴジラ』公式サイト

どんな雰囲気かは動画で見た方が早いです。本当にアイドルのライブみたいなノリでスクリーンに向かって叫びまくるという感じ。

「全国一斉!発声可能上映」は新宿のバルト9を本丸として、同時刻かつ全国で発声可能上映をやっちまおうという大変けしからん良い企画でした。上映終了後はバルト9で演者のトークショーがあり、それも各上映館に中継されるサービス付き。いやあ、楽しかったなぁ。

チケットは都心、言うまでもなく新宿バルト9から売り切れて、郊外あたりは席もまだ残ってるという感じ。オレが行ったイオンシネマみなとみらいは6割ぐらい席が埋まってました。

4割も席が空いているというと、心配になるのが会場(映画館)の盛り上がりですよね。上映15分前にもなるとロビーにコスプレの人もちらほら見えて、手には自作のうちわとペンライトという頼もしい出で立ちの人が増えてこりゃ大丈夫だと安心したものです。

しかしまあ、実際のところ大丈夫だったわけですよ。というのは、会場のド真ん中を牛耳っている一団が終始リードしてくれたんですよ。しょっぱなの拍手から、スクリーンに映る文字の絶叫読み上げ、手拍子等々。このリードしてくれた一団につられて、オレのように手ぶらで来たような人も一緒にのれたという印象です。サンキュー……圧倒的サンキュー……ッ!

話は変わりますが「ラ・ラ・ランド」は若い男女が夢と恋を追いかけるミュージカル映画で大変、とても大変良かったです。語彙が消滅したので大変良かったとしか書けませぬ。ミュージカル映画最高!

で、「ラ・ラ・ランド」でも発声可能上映があったそうですが、誰も発声しない上映になってしまったとか。

https://twitter.com/eeend/status/849616180537040896

ララランド発声可能上映で「誰も一言も発さず拍手すらない」悲劇が起こる – Togetterまとめ

この、誰も発声しない、拍手もしない問題は「シン・ゴジラ」発声可能上映でも本当に不安だったんですよ。というのも、明確にリーダーが決められていない場面では、手ぶらでやって来たお客様気分の人たちが何かが起こるのを待つばかりで何もしないということがあるわけで。特に一般向けな映画「ラ・ラ・ランド」では、このような事態が起きやすかったといえるのかもしれません。

じゃあ、その点で「シン・ゴジラ」はどうだったのよというと、そこは訓練されたオタク界隈の参加者意識が発揮されて、ちゃんと発声しまくりなリーダーグループによって会場の雰囲気がいい方向へ引っ張られ、お客様気分で来たオレのような奴も参加することができました。サンキュー、サンキュー!

お客様意識と参加者意識の問題は、もう「慣れ」とか「場数」の違いなんでしょうね。思えばオタク向けイベントは参加型のイベントへシフトしてきたように思います。アイドルのライブも増えましたし、コミックマーケットも全員がイベントを盛り上げる参加者として周知されています。参加者を育てる環境があって母数が多いなら、リーダーとなる人の数も一定数出てくるのは自然な流れでしょう。ただ騒がしいだけじゃなく、ちゃんと騒ぎ方を心得てるのも素晴らしいと思った次第です。

で、「ラ・ラ・ランド」発声可能上映が盛り上がらなかった理由は他にもあって、Togetterまとめにあるツイートでも触れられていますが、通常上映と間違えやすいチケットの売り方だったそうで。いけない、とてもいけない!

じゃあオタ向けの映画だけでやればいいのかよというと、歌って楽しいミュージカル映画は楽しいのでまたやってほしい気持ちもあるわけです。そこで、発声可能上映を盛り上げるための施策を考えてみました。

まず上映が始まったら拍手。もう全力の拍手。ライブスタイルの上映で一番ハードルが低いのは拍手です。誰でもできるし、一度やってしまえば気恥ずかしさもありません。盛り上がるシーンでは手拍子。これもハードルが低い。道化になって空気も読まずに拍手するのが吉。

上映開始時の拍手は、これが普通の上映スタイルとは違うという意識付けを観客全員に行き渡らせることができ、しかも参加のハードルを下げることができる非常に優れた手段だと思ったわけです。ハードルが下がれば、あれをやろう、これをやろうと思って来た人たちも奮い立ってくれる可能性が高まります、たぶん。その根拠は下記の動画を見たらわかりやすいんじゃないかと。

2009年にバズった、とあるフェスで踊り狂う1人の男の動画です。最初は誰もが遠巻きに見てるだけだったけども、踊る人が2人、3人と増えて、5人になったあたりで他の人もどんどん踊りに参加し、最終的に100人以上のダンス大会になってしまうという内容。

リーダーシップってこういうことなんじゃないかなぁ。ほとんどの人は面白そうなことがあっても自分ではアクションを起こさない、けれども誰かがやってたら便乗したいとは思ってる。1人で道化になれないというなら、最初から複数人で行って、ここで何をする、これをするというのを決めて複数人でやればいい。うん、言うだけは簡単だよね!

でも、今回の場合は単に「やってもいいこと」をやるだけだし、失敗したところで何の責任も負う必要なんかなくて、実は想像してるほどハードルって高くないのでは? ていうか、リーダーシップは方向付けのための行動をするかどうかだけの話だなーと思う次第なわけですよ。とにかくやってみるのさ。失敗したらどうするか? 笑ってごまかすさぁ!

というわけで、「ラ・ラ・ランド」発声可能上映を逃したおっさんが悔しさにまみれて書き散らしたナニをご覧いただきまして誠にありがとうございました。結論としては、リーダーグループになってくれる人たちは尊いということで、ひとつ。オレもリクエストしたかったよ! \I RAN!/

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